Jon Ayling

Jon Ayling

コンサルタント

2016/08/22

ベルリン

戦略を立てる者は、これから起こることを予測しなければならず、誰よりも多くの知識を身に着けていなくてはなりません。あるいは、少なくとも、自分の知識に自信をもった上で考えを主張しなくてはなりません。しかし世界的に有名なベルリンの広告代理店Leo Burnettのチーフストラテジストとして働くジョン・アイリングは、その知識をひけらかす必要はないと考えています。彼にとって日々の生活は学び続けるプロセスであり、あらゆる人間の行動は謎めいていて魅力的だというのです。こういった哲学を講義で学生に伝える一方で、ジョンはスタンフォード大学で二つ目の博士号取得を目指しています。ジョンのエッセンスは彼の部屋にも詰まっていて、旅先の思い出とジョンの人生の軌跡をいきいきと物語っています。60年代のスカンジナビアのデザイナーズグッズの横には、世界中のフリーマーケットで見つけた小物が並んでいます。部屋のいたるところに珍しいものが散らばっているのです。ジャマイカ人の母とイギリス人の父を持ち、音楽好きの家庭で育ったため、今でも音楽は彼の生活には欠かせない要素であり、リビングルームでも音楽が主役です。オレンジ色のUSMのサイドボードはAVボードとして使用しています。そしてその上にDJ機材のターンテーブルを置きました。

ご家族の中で、音楽は大切なものだったそうですね。先週、ベルリンフィルでチリー・ゴンザレスの演奏を聴いたのですが、ステージ上の彼の勢いと表現力に感銘を受けました。この二つの要素は、広告代理店のストラテジストとしての仕事に、どんな意味をもたらしますか?

リー・アイアコッカのこの言葉は、わたしにとって重要な意味を持ちます。「どんなに素晴らしいアイデアを持つことができたとしても、ひとに理解させることができなければ、アイデアは死んだままだ」全くその通りだと思います。誰だって楽しい話は聞きたいけれど、何時間も味気ない講演を聞きたくはありませんよね。だからプレゼンをする際は、いつも私と聞き手の双方向が自発的になるよう心がけています。プレゼンの場では相手に対して献身的であることが大切であって、発話者であるこちらこそ聞き手の気持ちに耳を傾ける必要があるからです。それは友人たちに音楽を聞かせることとよく似ています。レコードのセレクションはできても、いつどうやってレコードをかけるかは、聴かせる仲間たちのエネルギーにかかっていますからね。

あなたの人生で音楽はどんな役割を担っていますか?

親が音楽好きだったので、私は音楽とともに育ちました。私が生まれる数年前まで両親はジャマイカに住んでいて、日常的にカリプソとソカに触れていました。レゲエが生まれるずっと以前の話です。だから一番初めに触れた音楽はソウルとジャズということになります。マンチェスターにいたころは、ファンク&ソウルシーンにはまっていました。そのころは、何人もの友人たちとルームシェアをしていて、しょっちゅうミュージシャンたちが出入りしていました。だからDJとしての仕事に関していえば、そこでの影響が大きいでしょうね。だけど私自身は楽器を演奏しません。その点が、従妹でシンガーソングライターのリアン・ラ・ハヴァスとの違いです。

最も目を引く家具は、オレンジのUSMのAVボードです、とジョンは語っています。「このAVボードは押しつけがましくないけど、しっかり自己主張している感じがあります。」

家のインテリアで、インスパイアされるものを意識的に探すことはありますか?

周りから影響を受けますし、知り合いが私の家の個性を一緒に作ってくれるのは楽しいことです。そんな感じでインスパイアされています。しょっちゅう友達を招いて夕食をともにしますが、話を聞いていると、どの友人もみな、家具に関してはそれぞれの意見や主張があるので驚かされます。一番リアクションが大きかったのが、オレンジのUSMのAVボードでした。落ち着いたカラーではないですからね。このAVボードは押しつけがましくないけれど、しっかり自己主張している感じがあります。その点が気に入っています。

この部屋にある家具はどうやって手に入れたのですか?

ほとんどが偶然に巡り合ったものばかりで、フリーマーケットやアンティークショップ、旅先で見つけたものです。たとえば、今あなたが座っている椅子は、SträssleのKing Chairで、これは偶然にビンテージショップで見つけたものです。でも、前もってデザイナーや家具の背景にある哲学を調べてから、家具を探し始めることもあります。そのようなことであれば何日費やしても気になりませんよ。ここに引っ越してきたときに、ずっとほしいと思っていたデザイナーズ家具をいくつかそろえようと決めました。その一つがUSMのサイドボードでした。

そういえば、USMのサイドボードが二つありますね。どういう経緯で手に入れたのですか?

入居したばかりのころは、ほとんど家具を持っていませんでした。最初に買ったのが、白のUSMのサイドボードです。友達と二人で階段を運び上げるのは、本当に大変でした。でも、それもいい思い出です。オレンジのAVボードを見つけるまでには、かなり時間をかけて探しました。テレビやターンテーブルにも使えるように、USMでカスタマイズしてもらいました。そこに自分でさらに手を加えて、ケーブルが入るように、サイドボードの後ろに穴を開けたのです。技術的なことや、ケーブル、接続、構造などについては自分で調べながら加工していったので、かなり時間はかかりましたが、これもとても面白い体験でした。これも小規模ながら本物のプロジェクトですね(笑)。

USMのデザインで一番のお気に入りは、どのような点ですか?

拡張ができて、しかも安定性のある家具を見つけるのは、本当に難しいことです。家具は、私にとって大事な本やレコード、新聞、そのほか身の回りのものがうまく収納できて、使いやすくなければいけません。このAVボードは収納家具としてだけではなく、別の用途としても役立っています。この上にDJ用のターンテーブルを乗せて、ほぼ日使っているのです。そのうえ、このAVボードは簡単に組み合わせが可能で、仕事とプライべートの間をつなぐ橋の役割を果たしてくれます。

“プレゼンテーションの極意とは、献身的であることなのです。”

家具を購入する際には、どのくらい直感を重視しますか?

欲しくなるような家具のデザインは、家具が人の心に呼び起こすフィーリングによって決まってくると思います。だから、その家具に私に何を訴えるかに応じて、買うか買わないかを決めています。デザインを合理的に言葉で説明することもできるのは確かですが、本来、デザインで重要なのは、そういうことではないでしょう。結局は、この家具と一緒に暮らしてゆくのですから、家具とは人生の一部なのです。だから、まずはフィーリングが合わないといけません。さらにインテリアに関していえば、流行のトレンドと少し違う方向へ行くのが私の好みです。最近は、デザイナーの多くが自然素材を大切にしていて、多くの家具が木や石で製作されています。しかし、私がここ数年購入してきた家具は、ほとんどがプラスチックと金属でできたものばかりです。60年代のフィンランドとデンマークのデザインが大好きなのです。

お使いのインテリアは、あなたが暮らしてきた場所を反映していますか?

ビニール製のインテリアは、シンガポール、パリ、ブリュッセル、ジュネーブ、ニューヨーク、シカゴといった、世界中のさまざまな町から集めてきました。町の名前を挙げたら、きりがありません。壁にかけてある絵や写真も同様です。それでも例外はあって、あの、つるつる頭の男性の写真は、私が自分で撮ったものです。ジョン・バーチャル、ロンドンの有名な美容師です。ジョン・バーチャルは、アメリカとイギリスのVogueでカバーモデルのスタイリストを務めていて、彼自身、かなりエキセントリックな男です。

あなたはベルリンに住んでいらっしゃいますが、近所でお気に入りの場所はどこですか?

24時間やっているコンビニですね。日曜の夕方に突然、タイ料理を作ろうと思いたったときには、本当に助かっています。
あとは街角のレストランですね。ピザ屋のIl Giradischiや、Viet Village、日本食のSasaya、それにLes Valseusesなど、たくさんあります。気持ちのいい夏の夜に過ごす、家のバルコニーも好きな場所ですね。ジントニックを片手に、すぐ近くにあるビアガーデン・プラターから聞こえるざわめきをBGMにしています。
リビングルームから黄色い地下鉄が走っていくのを眺めるのも好きですね。ちょうどうちの目の前から地下鉄が地下に入っていくのです。そんな風景を眺めていると、とても心が落ち着きます。

ベルリンのどこが一番くつろげる場所ですか?

オフィスのすぐ近くにあるMuret La Barbaというイタリアレストランですね。仕事が終わって、ソウルフードを食べながら一杯やるには最高の場所です。最高のダーク&ストーミーを飲みたいときは、Redwood Barに行ってマスターのケビンに作ってもらいます。ほかにもオーダーベルガー通りのBonanza Coffeeもいいですね。店のひとたちがローストしてくれるコーヒーは、最高です。

ベルリンでも欠かさず続けている習慣はありますか?

本当は、ルーティーンは基本的に好みではないのですが、気持ちのいい習慣になっているのは、定期的にビューティーコンセプトストアのWheadonに入っている理容室を訪れることですね。いつも私を担当してくれるウィルは、ニューヨークの出身で、まとめづらい私の髪を上手に切ってくれる数少ない理髪師の一人です。私たちは、いつもジョークを交えてありとあらゆるおかしな話を語り合い、髪を切り終えて店を出るころには、いつも可笑しなエピソードで頭がいっぱいになっています。

ジョンは、プレンツラウアーベルクのBonanza Coffeeでコーヒーを味わっています。「この店でローストしてくれるコーヒーは、最高です。」

魅力的なご自宅と暮らしぶりをご紹介いただき、ありがとうございます。

このストーリーは国際的なインタビュー雑誌Freunde von Freunden.によって制作されたものです。 USM についてさらに知りたい方はこちら