Catherine Gay Menzel and Goetz Menzel

Catherine Gay Menzel and Goetz Menzel

建築家

2016/03/09

バレー州サンモーリス

キャサリン・ゲイ・メンツェル & ゲッツ・メンツェル夫妻は、スイス ヴァレー州 モンテー郡で建築事務所、ゲイ・メンツェルを経営しています。ハンブルク出身のゲッツとロウワーヴァレーに住んでいたキャサリンは、17年前にローザンヌで学んでいる時に出会い、その後、彼らは共にニューヨーク、バーゼル、ハンブルグで暮らしてきました。2009年に、共同経営の事務所を設立するために、2人の子供とともにサンモーリスの小さな中世風の街に移り住むことになりました。そして2年前、家族が修道院の壁の後ろ側にあるアパートへ引っ越した際に、長年の夢がようやく実現したのです。

オフィスには、キャサリンのお父様がご購入になったUSM製品が今もいくつかありますね。それをもらい受けたことをはっきりと覚えていますか?

キャサリン:ええ、もちろんです。これらから、USMの製品が機能的にもデザイン的にも経年劣化しない家具ということがわかりました。このシステム家具は綿密に計算されて作られているのだなと思います。例えば、オフィスのフロントエリアでは、2つのテーブルをL字に配置しています。こうすることで、足元の空間をできる限り確保しているのです。テーブル、キャビネット、棚はすべてUSMでそろえており、さらに2つのテーブルも購入しました。黒のUSMハラーは、父の時代のオフィスにも、今の私たちのオフィスにもよくなじんでいます。

“黒のUSMハラーは、父の時代のオフィスにも、今の私たちのオフィスにもよくなじんでいます。”

ゲッツ、あなたはハンブルク出身ですね。USMがスイスのブランドだとご存知でしたか?

ゲッツ:はい、もちろんです。ブランド名だけで、信頼のおける品質を持つスイス製品だということがわかります。さらに、USM製品が、ローマクラブや石油危機以前に世の中に浸透していた、60年代の前向きなイメージを感じさせます。それは、USMハラーの開発者の一人、フリッツ・ハラーによって想起させられるようなモジュラーシステムの構想につながっています。

あなたは、さまざまな企業や国で働いてきましたね。これらの経験の中で、どれが現在のあなたに最も役立っていますか?

キャサリン:私は、小さな会社で働くことで、自立することを学びました。ニューヨークでは、紙の購入から電話応対まですべて、4人のスタッフでおこなっていました。

ゲッツ:ヘルツォーク&ド・ムーロンは、私にとって第2の学びの場でした。そこで知った、知的自由さと型破りなデザインへの寛大さは、他に類を見ないものでした。

ヴァレーのようにローカルな地方にある建築をどのように感じますか?

キャサリン:それは建築によって様々です。あり余るほどの財力をもつ投資家が建てたにもかかわらず、極めて安っぽい仕上がりを見てがっかりすることもあります。また、非常にダイナミックな輝きを感じさせる建築もあります。たとえ世代が異なっても、ここでは建築家同士の交流はあります。例えば、私たちは同じコンペで競うこともよくあるのです。スイスでは、100万フランを超えるプロジェクトや15万フランを越える公共建設プロジェクトは、公募入札にしなければなりません。このシステムは私たちの業界にとって非常によい仕組みです。

お二人のインテリアスタイルはどのように表現できますか?

ゲッツ:私たちはさまざまなスタイルを混ぜ合わせるのが好きですが、気に入っているスタイルのほとんどが戦後の時代のものです。コンセプトが過剰ではない、優美なデザインがいいですね。近所の人からいただいた木製のサイドテーブルは大のお気に入り。長くて、ほっそりとした脚が個性的です。

キャサリン:新たに家具を加えるとなると、私たちは慎重に選びます。インテリアデザインで大切なことは、一貫性を保つことであり、連続性をもって拡張していけるということです。これには時間がかかります。5年間にわたって、リビングルームに新しいランプが欲しいと思っているのですが、「これだ!」と思えるものが未だ見つかっていません。

ゲッツ:ホームセンターで入手した本棚には、自分でペンキを塗りました。引越業者には、このような手作りの棚を引っ越し先に持ち込むことを笑われましたが、私にとっては愛着があり手放せないものなのです。リビングルームの絨毯は、いわゆる装飾品で、カーペットとしての役割を果たすということは重要視していません。バーゼルのアパート用に、ソファーと取り外し可能なUSMのテーブルを購入しました。このアパートは3階建てで、小さならせん階段があるのですが、そこを通ってすべてを運ぶ必要がありました。

家具を選ぶとなると、お二人にとって重要なのは使用用途の幅が広いことではないでしょうか?

ゲッツ:まったく、その通りです。ここ、サンモーリスでは、USMハラーテーブルは通常はダイニングテーブルとして利用していますが、子供たちがその上で工作をすることもよくあります。絵の具を拭き取ったり、接着剤をこすり取ったりする後片付けは、私のお決まりの仕事です。

キャサリン:私が父から受け継いだのは、あのテーブルです。父はUSMの大ファンでした。彼は70年代から80年代にかけて、建築事務所の家具としてブラックのUSMハラーを揃え始めました。その後は、彼自身のプライベートスペースにもUSMを使用するようになりました。父にとって、USMを超える家具はないのです。当時、USMはトレンディーな家具と認識されていました。

サイドボードのカラフルな四角形が、ドナルド・ジャッドのミニマルアートの一つを思い起こさせます。

息子さんの部屋には、USMのサイドボードもありますね。息子さんのご使用のために特別にそれを購入したのですか?

ゲッツ:そうではなく、それはハンブルクの小さなアパートで暮らしていた時にリビングルームに置いていたものです。貴重品から道具類まで、色々なものを収納していました。購入する時は即決でしたよ。その際、モノトーンカラーのユニットは欲しいと思いませんでした。カラフルな四角形は、ドナルド・ジャッドのミニマルアートを思い起こさせます。

ヴァレーでキャサリンとゲッツのお二人を訪問できたこと、そしておもてなしいただいたことに感謝いたします。彼らのオフィスの最新プロジェクトが、ウェス・アンダーソン監督の映画、『グランド・ブダペスト・ホテル』を彷彿させるというのもうなずけます。

このストーリーは国際的なインタビュー雑誌Freunde von Freunden.によって制作されたものです。 USM についてさらに知りたい方はこちら