Kristina Pickford
インテリアデザイナー
2018/02/28
オークランド
ニュージーランド南島の緑にあふれるクライストチャーチ郊外で建築士マイルス・ワレンによりデザインされたミッドセンチュリーの大きな家を丁寧に修復した後、インテリアデザイナーであるクリスティーナ・ピックフォールドと彼女の夫マイケルは引っ越しを決めました。今回の住宅選びは以前のものとは正反対なものでした。一軒家ではなくアパートを、南島ではなく北部を、田舎の代わりに屋外スペースのない都心を選択したのです。その意外な選択により導かれたのは海岸からたった数分のオークランド中心部にある歴史的なディルワース建築の美しいアパートでした。 クライストチャーチのミッドセンチュリーの家と同様に細部にわたって細心の注意を払い、クリスティーナはインテリアにクラシックで普遍的な雰囲気を加え、アパートを明るいタッチで改修しました。インテリアデザインと文化財の保護を仕事にしているクリスティーナにとって建築物の伝統と特徴を尊重するのは重要なことでした。クリスティーナにとってこの場合建築物を元々の骨組みに戻して、最初から始めるということを意味していました。彼女は2011年ニュージーランド南島のクライストチャーチで発生した壊滅的な地震の後、伝統的な建築物を保存する取り組みに関わっていたことで、この分野での経験を積んできました。オークランドのアパートに対しても同じアプローチを取ることにしました。 自分自身の作品やデザインを忘れて楽しむ、というわけでもなく、クリスティーナはオークランドの東方およそ 150km にあるコロマンデル半島にビーチホームを建てるという新しいプロジェクトに取り組んでいます。そこは自然な温帯に恵まれ森林と広大な沿岸部を再生している場所です。インテリアデザインビジネスもまたリニューアルしようとしている今、彼女にとって良いデザインとは何か、また絶え間なく変化し続けるインテリアデザインの世界で彼女の仕事がどのように関係を保ち続けるかということを聞くためにオークランドでインタビューをしました。
“USMには柔らかさがあります。パウダーコーティングされたスティールパネルとクロムのチューブがゴツゴツしすぎないような効果を出しています。ディテールの感じが素敵です。」”
ミッドセンチュリーの大きな家から都心のアパートへの引っ越しについて聞かせてください。かなり対照的だと思いますが?
まったく正反対です!でもより狭いスペースでも必要なものを揃えてどのように幸せに暮らせるかということは興味深いことです。実際、そのことが引っ越しの大きな割合を占めていました。アパートに住むという選択とより少ないもので暮らすという理想主義的な観念を試してみたかったのです。
実際には理想主義的な観念とはどのようなものでしたか?
私は田舎育ちでいつも広い土地やスペースや、ものには不自由したことがありませんでした。規模を小さくするということは実際私にとって、そして私たちにとって良いことだと思うのです。幸せになるのに、多くは必要ありません。たくさんの寝室は必要ないのです。ただ庭がないことは寂しく思います。
屋外にスペースはありますか?
ありません。屋外には出られません。もし永遠にここにいなければいけないと誰かに言われるのであれば、急いで立ち去るかもしれません。コロマンデルという場所がうまくいっている秘訣なのかも [クリスティーナと彼女の夫はそこでビーチハウスを建てています]。自分には踏みしめる土地と働く土地が必要だと思うのです。
この状況は特にアパート生活に対してかなりどっちつかずの関係を持ってきたニュージーランドの特徴だと思いますか?
そうですね。こちらでアパート生活を始めたばかりですが。歴史的にニュージーランドではアパートで暮らすことを選ぶ人は少数でした。郊外が私たちが育ってきた場所ですから。
この考え方は変化していると思いますか?
そう思いますが、アパート暮らしを促すように町を開発することには慎重になる必要があります。オークランドにとってはまだ先の話ですが。歩行者よりも自動車優先で、公共の場があまりありません。港と島がとても近いのはすばらしいことですが。
デザインの経歴についてお聞かせいただけますか?
私はランドスケープデザインを学びましたがそれが後にインテリアデザインに変えました。クライストチャーチで独立し7年間インテリアをデザインしていました。建築史と美術史を学ぶため大学に戻り、彫刻も少しかじりました。実は私は小さいころからずっと建築業を営みたいと思っていたのです。私は父の製図版を使わなかったので才能がないと母に言われたんですよ。
お父さんは建築士ですか?
いいえ、父はエンジニアです。私は建築家「志望」です!インテリアデザインと建築史が出てきたのはそこからかと思います。作りたいという欲望。実はプロジェクトを持つことは大好きです。開始するプロセスとできあがったプロジェクトを見届けることが大好きです。
建築と美術史は文化財へとつながりました。ヘリテイジ・ニュージーランド・パウヒア・タオンガと協議会で6年間文化財アドバイザーとして働きました。それによりフィンランドや他の場所に導かれ、すばらしい人たちと出会い、世界一のモダニズム建築の例を訪問することができました。それから CoCA です...
クライストチャーチの Centre of Contemporary Art (CoCA) についてお聞かせください。
4年間プロジェクトの議長を務めていました。見通すにはすばらしいプロジェクトでした。ついにギャラリーを再開できたことは実に有意義でした。それは主にブルータリストギャラリーの修復とアップグレードの監督に関わるものでした。それは2011年の地震後に保存された数少ないモダニズムビルの1つでした。
そして現在一周回ってインテリアデザインに戻ってきました。その流れついてご説明いただけますか?
良いデザインを構成するのは何かということに関してまるで新しいエネルギーと明確さを持ってインテリアデザインに戻ってきているように感じます。私にとって良いデザインとは状況の感受性、優秀な空間認識、そして多くの場合軽いタッチを必要とします。個人的に倫理的で素材の思慮深い使い方による環境を考慮したデザインへのアプローチに夢中になります。
アパートの家具とオブジェをどのように選ぶか教えていください。
カルロ・スカルパのコーヒーテーブル、faux Frenchのバンブー戸棚など、私たちが購入した多くの家具はヴィンテージです。サーリネンのダイニングテーブルと Flexform のソファなど、新品を購入したものもあります。 私は自分たちが一生大事に楽しむことができると思うもの、試練に耐えられるものを選びます。
スペースの中でスタイルや時代、形式的なレベルを混ぜ合わせることが好きですがそれをとてもかすかにソフトな方法でするのが好きです。表面のテクスチャーそして様々な質の光とその相互作用の仕方で遊ぶことが大好きです。
“「USMの何世代にも渡って長く使えるべきだという考えが本当に好きなのです。本来なら未来を年頭において全てのものをそんな風にデザインするべきなのです。」”
USMの家具をアパートにどのように取り入れたか教えていください。
まず寝室の家具から始まりました。実はかなり早い段階で寝室とリビングの両方にマッチして反映できる何かがほしいと考えていました。実際、特注でつくろうかと思っていました。でも私はずっとUSMが大好きでしたから。
USMの正規販売代理店ECC のエリカ・ロドリゲスは本当に頼りになりました。USMのホームページにある3D作図ソフト『コンフィギュレーター』を使って一緒にデザインしました。商品を最大限に活用するにはそれに精通した人物のサポートが必要だと思います。エリカはそれにぴったりな人物でした。モジュラーシステムは幅広い視野を与えてくれます。
USMには柔らかさがあります。パウダーコーティングされたパネルとクロムのチューブがゴツゴツしすぎないような効果を出しています。ディテールの感じが素敵です。
時間の経過を感じさせない耐久性が高いという点でも気に入っています。USMの何世代にも渡って長く使えるべきだという考えが本当に好きなのです。本来なら未来を年頭において全てのものをそんな風にデザインするべきなのです。
この作品の非対称性が本当に好きです [本棚を指さしながら] 小さくて変わった引き出しもあります。作品をカスタマイズできるという事実がそれを際立たせています。遊び心があると同時に節度があり控えめです。
美しいアアルトの作品をいくつかお持ちですね。これらについてお話しいただけますか?
アアルトのスツールを持っています。1950年代のオリジナル作品で、2011年、アルヴァ・アアルトシンポジウムでヘルシンキにいた時に購入しました。その椅子はファンレッグシリーズのもので1954年に遡ります。(3本脚バージョンはかなり珍しいものです)まだオリジナルの革張りです。
また最近フィンランドのオンラインストアで アアルトのコートラックも購入しました。フィンランドのすてきな警官が売り手でした。それは1928年にアアルトがデザインしたパイミオサナトリウムからのもののようです。アアルトのスタディツアーでサナトリウムを訪問したのでそれを持ててうれしく思います。とはいえそれはニュージーランドのアパートではなくサナトリウムにあるべきだという考えは拭えませんが。
ダビデ・グロッピのランプが白い USM キャビネットととてもよく合っていますね。
はい。この照明のシンプルでこの世のものとは思えない品質に惚れました。「Less For Less」というぴったりの名前がついており、標準的な土台と小さめのマグネットの土台のものがあります。マグネットの土台は USMのスティールにくっつけるのにぴったりです。
USMはニュージーランドのライフスタイルに合うと思いますか?
間違いありません。別の環境にユニットを持ち込んでも、完璧に機能します。柔軟性がある点がとても気に入っています。空間によってとてもリラックスしたように見えるだけでなく知的にも見えます。ビーチハウスでも喜んでUSMを使うでしょう。
新しい空間でそれを機能させるように組み替えることができます。すばらしいことです。普遍的な雰囲気を持っていて、現代そしてミッドセンチュリースタイルととてもうまく融合します。
壁にかなりたくさんのニュージーランドの芸術作品がありますね...
実はコレクションのすべてが現代のニュージーランドのアーティストのものです。長い間住んでいたのでカンタベリーのアーティストの作品をたくさん持っています。
それから マイケル・パリコワイの 山高帽をかぶった男。この作品はアパート用に購入したのですか?
はい。ここ CBD にいるという考えがとても好きなんです。彼はルネ・マグリットの絵の男のようです。彼はある種50年代のキャリア組です。一方で町をまっすぐ眺めていて、もう一方で壁をぼんやり眺めています。彼が町だけでなく彼の「家」も眺めているというアイデアが気に入っています [埠頭の端のアパートの外のマイケル・パリコワイの「Lighthouse」より]。
アパートとお気に入りの港を見せてくれたクリスティーナに感謝します。 クリスティーナのプロジェクトの詳細は ballantynehouse.co.nz と www.coca.org.nz をご覧ください。 このストーリーは国際的なインタビュー雑誌Freunde von Freunden.によって制作されたものです。 USM についてさらに知りたい方はこちら