Jérémy Tarian

Jérémy Tarian

アイウェアブランド“ジェレミー・タリアン”創設者

2016/10/17

パリ

ジェレミー・タリアンは“旅”をこよなく愛するパリジャンです。パリ中心部1区のデ・プランテ公園近くで幼少期を過ごし、ベルリンとニューヨークに拠点を移しました。そして2012年にパリに戻り眼鏡のオリジナルブランドを立ち上げました。色と上質なマテリアルが美しい、シャトー・ドーの中心街の新しいアパルトマンと、北マレ地域の路地にひっそりとたたずむ彼のアトリエをご紹介します。

サロンには、リーン・ロゼのソファー、プティッテュ・フリトュールのためのスタジオ・プールの黒いテーブル、HAYの白いテーブルがあります。 長い壁には黄色と白色のUSMハラーがあって、アルテミデのジャンビエー・マリスカルの照明が出迎えてくれます。

ジェレミーがデザインし、色をつけた様々な陶器がディスプレイされています。

ドュプティット・トウアール通りにとても愛着を持っていらっしゃるようですね。

そうですね。パリに帰ってきてからパリ3区のドュプティット・トウアール通り12番地に小さなアトリエ兼アパートを借りました。 それから、ブランドが大きくなったので、同じ敷地内にもっとちゃんとしたアトリエを構えることができました。 それから間もなく、パリ10区の方に引越しました。

新しい地区のどんなところを気に入っていらっしゃいますか?

全てが混在しているところです。僕が入居している建物は庶民風といった感じですが、周りにはかなり古い建築物が目立ちます。30メートルほど歩くだけで、全く違った景色が見えてきます。僕はこの通りの混沌とした雰囲気が好きなんです。

新しい場所で、すでに習慣となっているものはありますか?

今のところは、食べるところだけでしょうか。(笑) 僕はアルメニア出身です。パリにはラマルティーヌ通りにアルメニア料理のスパイス屋さんがあったり、モロッコ料理のレストランがあったり、その向かいにはシリア料理屋さんがあったり… 選択の幅が広くて最高です。

“様々な色と言えば、USMの家具も2色使いを選んでいますね。 このツートーンカラーのストライプの空間がとても好きですね。”

100年近く前から、アトリエのある辺りは数々の職人達が住む場所だったわけですからね。 今のご近所にはどういった方々がいらっしゃるのでしょうか。

多種多様といった感じですね。 左側にはマッサージ学校、右側には建築事務所、そして雑誌の出版社が2つ、クラシック音楽のフェスティバル協会、そして日本人女性が経営する陶芸教室など… それに僕、陶芸が大好きで良くやっているんです。

そうなんですか ?

はい、週に2、3回陶芸教室に通っています。 子供の頃に良く陶芸をしていました。好きなんです。 眼鏡の製作に関しては、素材選びにとてもこだわっています。アセテートはオリジナルカラーを出すのに欠かせない素材です。 陶芸を作る工程や土を混ぜることにも少し似ていますね。

ところで、試作モデルはどうやって作られているのでしようか?

まずのスケッチは手書きで、その後アシスタントがパソコンを使ってそれを複製しています。 イタリア・ミラノの近くで アセテートのプレートをチップ素材の段階から製作して、プレス加工を施しています。こうやってオリジナルカラーの製品ができるんです。 それからプレートはジュラシエンヌにある工場に送られて、ハンドメイドで試作品作りが始まります。

このコンセプトブランドはいつ立ち上げたのですか?

「タリアン」は2012年に誕生しました。本当にあっという間でした! パリに戻って来た時には、母の家で作業をしていました。母のサロンを占領して倉庫代わりに使っていたんです。(笑) 少しずつですが会社は成長し、よりプロフェッショナルなものになっていったのです。 僕にとって一番大切なのはブランドイメージです。狙いはシンプルな写真を通して自分たちのことを語るとか、違ったアングルで世間に何かを問いかけること。少し変わったものを提案したいんです。 ブランドを立ち上げた時から、写真家のケート・フィチャードがブランドイメージを作り出してくれています。

「タリアン」を3つの言葉で表すと?

職人的な製作に関しては、「正真正銘」、ブランドイメージは「現代的」、そして...集約すれば 「魅力的」、これらの言葉につきます ! (笑)

“僕は周囲が禅の状態というか、すごく片付いていないとダメなんです。私の内に秘められたスイス人気質とでもいうべきでしょうか…”

ジェレミー・タリアンのアトリエでは黒のUSMハラーが様々な眼鏡フレームのショーケースになっています。

お父様のアラン・ミクリさんもメガネブランドをもっていらっしゃいますね。 職人技、ディテールへのこだわり、美しい素材などへの情熱はお父様の影響ですか?

父は、自分のブランドを30年間続けてきました。 父のブランドのチームとは仲良くさせていただいていましたが、一緒に働いたことはありません。 仕事を継がせるつもりはなかったのでしょうね。それがキッカケにもなったというか、最終的には同じ道を選ぶことになりました。 基本的には、学校の専攻が金融だったので、ベルリンへドイツ語を習いに行きました。眼鏡の世界からは遠く離れていますね。 ところが、偶然にも眼鏡屋での会計のインターンシップの仕事を見つけたんです! ベルリンは家からすぐ近くでしたからね。 会計の仕事は面白いというものではなく、それがドイツ語ときたらなおのことです! (笑) でも2週間の間に、少しずつクリエーターチームへと流れて行きました。 そこで2年間働きました。素晴らしい経験でした。 その後、ニューヨークのグラフィックデザインスクールに入って、眼鏡ブティックに勤務することになりました。 仕事は好きでしたね。そして自分で作ったデザインを見せられるようになっていた。 パリに戻ると決めた理由は色々とありましたが、「メイド・イン・フランスのハンドメイド」を作りたいというものが一番の理由でした。 製作を早くできるようにすることが重要だったので。

「Limited Eye-dition」 というラインを500モデル限定でご用意されていますね。 なぜ限定リリースにしたのですか?

これはブランドのDNAですね。 少量生産であることについては、自分たちで色を作って小さな製品シリーズを作っているためです。 またコレクションの半分は、20年、30年はもつあろう素材を用いて作られています。 中国の古いアセテートと、他の素材を組み合わせて作っているものは30、40本くらいしか出来なかったりもします。 独特でパーソナライズされた色に辿り着くためには、仕方のないことなのです。

インスピレーションはどこから?

まずは色ありきですね。 フレームコンセプトでも、色が主体となって形を作っていくんです。 光もとても重要なんです。レリーフができるように、色の後ろから透明加工を施すフレームがたくさんあります。

インテリアデザインはどこを原点としているのでしょう?

何よりも僕の働き方から来るのじゃないでしょうか。 僕は周囲が禅の状態というか、すごく片付いていないとダメなんです。私の内に秘められたスイス人気質とでもいうべきでしょうか… (笑) 僕はパーケットフローリング(木片を寄せ集めて作られたフローリング)、暖炉、昔風の窓…そんな建物の中で古い家具に囲まれて生活しているんです。 一方で、そう言った素材などを保護したり、現代的な感じを出すために、ストックしてみたり : 半分開いていて半分は閉まっているキッチン、風が通るように扉を外してみたりと、伝統的と現代的なテイストが混在しているというか...

ということは、あなたのブランドに似ていますね。

ええ、そうですね。(笑) ところで、様々な色と言えば、USMの家具も2色使いにしていますね。 このツートーンカラーのストライプの空間がとても好きですね。この色の組み合わせのUSMがキッチンに良く映えます。 白いリネンのように、自分で色を入れることが出来るベーシックなものが好きなんです。

棚には何をストックしていらっしゃるのでしょうか?

うちにはUSMの家具がふたつあります。それぞれ食器棚、メガネケース、本棚、靴箱として使っています。 本当に何にでも使えるんですよ。

“私たちのブランドと共に成長した家具だと言えるのではないでしょうか、数々の展示会でも使用しました。 使い込む中でカスタマイズして、組み替えることになりました...”

他にアトリエでもUSMの家具をお使いのようですね…

そうですね。仕事で使えるように、ディスプレイ用に大きなユニットを買いました。 私たちのブランドと共に成長した家具だと言えるのではないでしょうか。数々の展示会でも使用しました。 使用する過程でカスタマイズして、何回か組み替えたんです。 いま家にある他の家具と一緒で、使い込んでいくうちに馴染んでくるというか、僕のニーズに合わせてきたというか。

どうやってブランドを知ったのですか?

僕は年に2回ジュネーヴのHEAD (Haute Ecole d'Art et de Design) でワークショップを開催しています。スイスの学校ではUSMをたくさん使用していました。 初めてワークショップに行った時から、学校にUSMの家具があってとても気に入っていたんです。そして、パリでも見かけたので。 2012年にショールームを訪れた、それがすべての始まりですね。

HEADで催されているワークショップについて伺いたいのですが。

Tarian+というコラボレーションを発信し始めたばかりです。 まずはスタート段階として、HEADの学生たちと共にフレームを作成しました。 アイデアは? 僕はアセテートプレートと、主題を提供し、学生はすべて手作りでメガネを作るのです。 最後までやり遂げることを任せたり、キャンペーンのイメージ企画を提案したりもします。 これが、素晴らしい結果になるんです...

素敵なアパートとインスピレーションの湧くアトリエをご紹介いただきありがとうございました。 感謝いたします。

このストーリーは国際的なインタビュー雑誌Freunde von Freunden.によって制作されたものです。 USM についてさらに知りたい方はこちら